市井(しせい)の人 2017 8 27

 いつも夏が来ると思い出すことがあります。
私は大学生の夏休みに、工場でアルバイトをしました。
 毎日、金属材料に穴をあけてネジを入れるという作業を繰り返す日々でした。
私は、次第に、こうした作業が嫌になってきましたが、
周りを見れば、こうした作業を工場の工員は、
何年どころか何十年も続けていると気づいたのです。
 それでも、彼らは卑屈になるどころか、
自分の仕事に誇りと責任感を持って続けていました。
そんな彼らを見て、私は「立派である」と思いました。

 さて、本題に入ります。
先日、私は、「オバマ政権は、
黒人や中南米の移民や『不法移民』には、
ふんだんに予算を使いましたが、
白人貧困層は忘れ去られてしまった」と書きました。
 私は、このことで、後になって、
誤解のないように書いておく必要があると思いました。
 こうした傾向は、オバマ氏特有の性格ではなく、
アメリカのエリートやリベラル派に共通する傾向性です。
 つまり、アメリカのエリートは、
黒人や中南米の移民や不法移民には、やさしいのですが、
没落していく白人の労働者階級には冷たいのです。
 「白人貧困層」と書きましたが、
これでは、正確な表現ではなく、
「貧困化しつつある白人層」と書くべきでした。
さて、アメリカにおける所得別の階級を書きたいと思います。
富裕層
専門知識層(専門知識を職業としている人。エリート)
中間層(労働者階級。工場労働者やサービス業に従事している人たち)
貧困層
 問題は、没落しつつある「中間層」です。
「富裕層」や「専門知識を職業としている人たち」は裕福なので問題ないでしょう。
「貧困層」に対しては、オバマ政権は、ふんだんに予算を使いました。
 残された「中間層」である労働者階級、
つまり貧困になりつつある白人労働者は、
オバマ政権時代に厳しいことになりました。
 グローバリズムの激化もあったでしょう。
工場のロボット化もあったでしょう。
経済が「金融化」するのについていけなかったでしょう。
(いや、怪しげな金融商品を売りつけられて損をしたかもしれません)
 こうした没落していく白人労働者に対して、
エリートやリベラル派は、冷たかったのです。
 多くのアメリカ人は、「彼らは、黒人や中南米の移民や不法移民には、やさしいのに、
没落していく白人の中間層には冷たい。なぜだ」という気持ちになったと思います。
 これは、「アメリカの分断」の大きな原因になりました。
2016年の大統領選挙においては、白人の労働者階級の怒りが爆発しました。
 エリートやリベラル派に、
白人労働者に寄り添う気持ちがあれば、大統領選挙は違う結果が出ていたでしょう。
 「アメリカ国民は、富の集中や金権政治にうんざりしています。
労働者の味方だったはずの民主党が、
クリントン政権の頃から都市の進歩派富裕層を主要な資金源に取り込み、
彼らの利益を代表するようになりました。
 アメリカは、Flyover country(上空を飛ぶ国)になって、
つまり、権力者も資金も、東海岸と西海岸を飛行機で往復するだけで、
その空路の下にある大陸中央部は、完全に無視され、馬鹿にされている。
中西部や南部の労働者は、生活困窮の原因をそのように認識していました」
(引用 「超一極集中社会アメリカの暴走」 小林 由美  新潮社)

Redneck 2017 5 7
 私が生まれた家は、農家でした。
日本の平均的な農家に比べれば、
耕作面積は大きかったと思いますが、
それでも生活は豊かとは言えなかったと思います。
 大粒の汗が流れ落ちている父母を見て、
私は農作業の手伝いをしました。
 その時、父母から「首に手拭いを巻け」と言われましたが、
それでは、外見が「田舎のおやじ」になってしまいますので、
私は、手拭いを使わなかったのです。
 しかし、後になって、大変なことになったのです。
首筋というか、首の後ろが日焼けをしてしまい、
赤くなって、ひりひりと痛むようになったのです。
薬を塗りましたが、あまり効果がなく、痛みが2日ぐらい続いたと思います。
 「Redneck」とは、日本語に直訳すると、「赤い首」となるでしょうが、
アメリカでは、屋外で、肉体労働をして首が赤くなった肉体労働者の意味です。
首筋が赤くなるということは、白人の肉体労働者のことかもしれません。
こうした人たちが、トランプ氏の大統領選挙当選の原動力になったかもしれません。
 さて、父母が、一生懸命働いたおかげで、
私は、東京の大学に入学することができましたが、
そこで、不思議なことを見ました。
 当時は、学生運動が盛んで、
今風に言えば、リベラル運動となるのでしょうか。
 そういう運動に参加している人に、意外な人たちがいたのです。
東京という大都市の一等地に生まれて自宅は裕福な家庭なのに、
学生運動に参加している人たちがいたのです。
 私は、「なぜ、大都会に生まれて裕福な家庭なのに、
学生運動に参加するのか」と、ずっと不思議に思っていましたが、
後になって、知人から聞いたところでは、
「裕福でも、彼らが学生運動や左翼運動に参加するのは、
一種のファッションであり、格好いいからだ」と言うのです。


























































































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